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中国の日本語教育が直面する問題と新しい試みについて@北京日本人学術交流会

2016年5月13日 @ 18:30 - 21:30

社会人200元、学生100元

第220回北京日本人学術交流会では、武漢の武漢工程大学外語学院校聘教授の久保輝幸氏に「中国の日本語教育が直面する問題と新しい試みについて」というテーマでお話しいただきます。中国の日本語教育は新しい状況を迎えていますが、従来と違った認識をもとに新たな日本語教育の試みを具体的に論じていただきます。
また、武漢の日本語教育や日本文化の教育に関しても簡単にお話しいただく予定です。
貴重な機会となると思われます。ご関心のある方のご参加を心よりお待ちしています。

参加希望の方は、5月11日(水曜)深夜までに以下のフォームにお申し込み下さい。
なおいつもと違い平日5月13日(金曜)の夕方からの開催ですのでご注意ください。

https://legacy.creativesurvey.com/reply/0609b55ff567d62696037f26b1075e

どうぞよろしくお願いいたします。

◎第220回北京日本人学術交流会
◎日時:2016年5月13日(金曜)午後6時開場、午後6時半開始、
午後8時まで報告、食事をとりながら共同討論、午後9時半ごろ終了予定

◎場所:亮馬橋幸福ビルB座一階中華料理店、京味菜の一室(くわしくはもうしこんでくださった方にお知らせいたします。)
◎講師:久保輝幸氏(武漢工程大学外語学院校聘教授)
プロフィール
2000年大阪府立大学卒、茨城大学大学院を経て、中国科学院博士課程を修了(理学博士)。
ケンブリッジ大学のニーダム研究所でフェローシップスカラー、茨城大学非常勤講師等を経て2014年より武漢工程大学で日本語を教える。
専門は、中国科学史でとくに宋代以前の本草学の研究をしている。
牡丹の考証研究や宋代園芸史の研究などで日本科学史学会奨励賞(2011)
主な論考に「中日文化交流中的植物要素初探」共著『日語学習与研究』(180号、2015)など。
◎参加費:運営費、資料代、食費など
中華料理や飲み物が用意されます。
社会人(企業派遣留学生含む)200元、留学生、学生100元
◎言語:主に日本語

中国の日本語教育が直面する問題と新しい試みについて

全国の日本語学科は現在、全国的に厳しい状況にある。これを日中の外交的摩擦によるもので、外交的に改善されれば、日本語科の状況も改善されるという見方がある。しかし、問題はそんなに単純だろうか。日本語の需要から、考え直してみたい。
日本語を学ぶ大きな動機として、よくアニメが指摘されるが、実際に日本語を学ぶ本科生に対してアンケートをとってみると、日本語を選んだ学生の中で、趣味だけのために日本語を選択した学生は実は少ないことが分かる。さらに、日本語科のなかには、そもそも日本語科の志望を出したわけではないのに、日本語科に振り分けられてきている学生も少なくない。中国の大学では、日本語科および第二外国語で日本語を学ぶ学生はそれぞれ約24.5万人、36.6万と大変多いが、それが直接、日本語の人気を表しているのではないことに、まず注意しなければならない。日本語科は、中国の大学506校に設置されており、設置数で第11位である。実際には過剰供給の状態にある。
したがって、毎年日本語を専攻した学生が大量に卒業することになる。しかし、日本経済に勢いがなく、加えて中国の物価・賃金の上昇で、日系企業の中国進出は鈍化傾向にある。日本語科の卒業生の就職状況は良いとはいえないし、当面好転する兆しもない。これらは、日本語教育関係者ならば周知のことであろう。昨今の日系企業では、中国語を話す日本人が増え、彼らが中国人従業員に直接指示を下している様子を目にすることが多くなった。また、日系企業の管理職も日本語ができない中国人が多くなっている。つまり、日系企業の現地化が進んでいるのである。すると、日系企業にとって、高い日本語能力をもつだけの中国人学生は魅力がなく、専門性を身につけさせようとしても、職場の定着率の低さが足かせとなる。実際に、多くの地域で日本語科卒業生の就職率は高くないという声が聞かれた。学生にとって、既存の日本語学科で高度な日本語を習得しても、卒業後のキャリアにあまり有益ではなければ、学生も前向きになれないだろう。
もう一点、注意したい点として、科学技術分野における中国の政策がある。いま中国の大学・研究所は、教員や研究員に対して、質の高い研究業績を強く求めており、毎年業績審査があって、科研成果のない教員は契約更新ができなかったり、あるいは行政職(事務)への配置換えを迫られたりしている。労働者の権利は日本ほど強くないため、定年まで同じ地位にいられる保証はないのである。そのため、中国の高等教育機関は教育より科研という雰囲気に覆われ、NatureやScienceなど一流学術雑誌への論文掲載には褒賞を準備しつつ、「SSCI」や「核心期刊」など採択率の低い学術雑誌への論文掲載を教員に迫っている。日本が強みとする幹細胞研究や、アメリカの国家プロジェクトBrain Activity Map Project(脳内の仕組みを解明するプロジェクト)、人工知能研究などの分野でも、中国の研究チームが発表した論文は実に多彩で、勢いがある。日本では、高速鉄道の列車事故が中国科学技術の未熟さを露呈したという印象を強く与え、それがいまだ根強いようだが、実際には科学技術で日本が中国に対して圧倒的な優位を維持していた時代は、すでに終わっていた(参考①、②)。日本人の中国に対するある種の偏った見方は、科学技術に限ったものではない。世界各国のなかで、日本人は中国に対するマイナスイメージは突出している(参考③)。
ともあれ、中国の理工系学生にとって日本への大学院留学は、隣国で、比較的安い学費が魅力となっているが、研究水準でかつてのような大きな差はなく、物価が高く資金調達が難しいなどの問題がある。優秀な研究者ほど、研究業績が重視され、潤沢な資金がある中国に残って研究を続けるほうが、より優れた成果を出せるだろう。つまり、学生のキャリア設計上、日本が今後も留学先として魅力があるものか、苦心して日本語を習得する価値があるかという問題が突きつけられている。
また、日本語を専攻する学生の場合、特化した日本語能力の習得が今後求められていくと想定される。具体的には、特許翻訳、司法に関連する翻訳および通訳などである。こうした、専門分野に特化した日本語にも対応できる教育体制が必要となるだろう。日本語と同時に、十分な英語能力を習得させる試みも考えられる。ある高等教育期間における「英日マルチリンガル専攻」に所属する学生の状況を調査したところ、以下の結果が得られた。
まず、二カ国語の同時学習は学生の負担が大きいと懸念されたが、調査校においてそうした傾向はみられなかった。むしろ、学生は英語による日本語教授や英日日英翻訳など英語と日本語を組合せた授業を望んでいることが明らかになった。英日専攻の学生はすべて大学入試まで英語を学んできており、一定水準の英語能力を有している。そのため、日本語の学習が大きな負担にならないのだろう。また以前に比べ、語学教材は飛躍的に豊富になり、学習効率は高まっている。とくにネット動画やスマートフォンは外国語教材を格段に豊富にして、教室にいなくても独学で語学を身につけられる時代になっている。それに加え、国際社会で求められる英語力も変化しており、一定水準の外国語を複数習得するほうが実用的とする見方が強くなりつつある。今後は中国でも、英日二カ国語に通じた教員が必要とされる。それには日本で英語の教育経験がある外教を招聘するなどの方法が有効である。
中国国内の大学院修士課程入試は日本と異なり、統一の一次試験がある。一次試験では第二外国語が要求されるため、英日マルチリンガル課程の学生の場合、英語と日本語で高得点が期待できる。また、英日マルチリンガル課程の学生にとって翻訳や通訳で有利になる状況もある。日本の苗字や地名、例えば田中や横浜、箱根などは、中国でその漢字の中国語音で読まれている。しかし英語圏では当然それぞれTanaka、Yokohama、Hakoneと日本語音に基づいて読まれる。そのため、日本について英語で話されている内容を英中通訳する際、通訳者はこれらの固有名詞が中国語でどう言われるかを知っている必要がある。これは英日マルチリンガル課程の強みとなろう。
もう1つの提案として、とくにMTI(翻訳修士)課程を設置する大学が奨学金・学費減免などを設けて、日本人学生を積極的に集めることである。日本には現在、MTIの設置を標榜する大学院はなく、日本語中国語間では、それに準じる課程が杏林大学大学院にあるのみである。昨年のISO17100の発行で、資格試験より翻訳学の学位が優先されたことから、今後日本の翻訳業界や大学院も対応を迫られている。中国では、早くからMTIの設置が始まっていることから、中国の大学院は日本人留学生を積極的に受け入れられる前提条件がある。既存のMTI課程は中国人学生が多いが、そのなかに日本人学生は2-3割入ってくれば、学生が互いの母語を教えあう環境が生まれる。ここで翻訳家をめざす日本人ないし中国時の友人が得られれば、卒業後のかけがえのない財産となるだろう。
今回の発表では、最後に湖北省地区の日本語教育事情および日本文化の教育実践例などについても簡単にご紹介して、意見交換の場としたい。
【参考】
①China’s rapid rise in global science and engineering
http://www.universityworldnews.com/article.php?story=20140227152409830
②「日本を抜いた中国の科学技術力~その知られざる実像」
科学技術振興機構中国総合研究交流センター上席フェロー馬場錬成
www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160414-OYT8T50077.html
③Global Image of the United States and China
http://www.pewglobal.org/2013/07/18/global-image-of-the-united-states-and-china/

詳細

日付:
2016年5月13日
時間:
18:30 - 21:30
費用:
社会人200元、学生100元
イベントカテゴリー:
イベント タグ:
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会場

亮馬橋幸福ビル中華料理店京味菜の一室

主催者

北京日本人学術交流会

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